YASARA:Version 24.10.5アップデートの追加機能・変更点のまとめ

2025年1月7日火曜日

【YASARA】

t f B! P L

 YASARAのアップデートから少し時間が経ってしまいましたが、前のバージョン(Version 24.4.10)からVersion24.10.5へのバージョンアップデートで新しく追加された機能や変更点などについてまとめたいと思います。

なお、これまでのバージョン更新に伴う変更点(ChangeLog)の一覧は、開発元の以下のページから確認することができます。
https://www.yasara.org/changelog.htm

New highlight

PCA分析機能が追加

コマンドに「PCA」と「PCAPos」が追加され、PCA分析ができるようになりました。「PCA」はPCA分析を実行するコマンドで、「PCAPos」は、PCA解析で得られた主成分に基づいて構造を構築するコマンドです。
各コマンドの詳細については、ユーザーマニュアルのコマンドページをご覧ください。

MDトラジェクトリの解析マクロ「md_analyze.mcr」にデフォルトでPCA分析が追加され、htmlレポートに主要な動きを示す動画や各コンポーネントを軸とした散布図などが追加されるようになりました。

マクロ内のパラメータセクションの以下を編集することで、PCA分析の対象原子や解析に用いるPCAコンポーネント数を指定できます。
デフォルトでは、タンパク質のバックボーン原子(N, CA, C)と核酸のC1*、C3*、C5*原子がPCA分析の対象に設定されています。

マクロ該当箇所


動画出力例

金属表面吸着のMDシミュレーションが可能に


新規マクロ「md_runsurface.mcr」と「md_runsurfacefast.mcr」が追加され、自動で分子の金属表面吸着のMDシミュレーションを実行できるようになりました。
マクロを実行すると、自動で金属の単原子層でできた表面が構築されます。その後、吸着させる分子の配置が提案されて画面に表示されるので、この段階で分子の位置を調整したり、シミュレーションセルのサイズを変更することができます。

マクロ実行中画面



利用できる金属はAl, Ni, Cu, Pd, Ag, Pt, Au(デフォルト), Pbで、マクロファイルの「surfelement」パラメータで指定でき、金属の層の数は「surflayers」パラメータで変更できます。

シミュレーションの実行方法や注意点などの詳細については、YASARAユーザーマニュアルの以下のページをご覧ください。
Recipes > Run a molecular dynamics simulation > Running a surface simulation the easy way.


New feature

5文字の残基名に対応

これまでは残基名に1~3文字を使用できていましたが、5文字の残基名にも対応できるようになりました。
(コンソールから「NameRes」コマンドを使用して、5文字の残基名に変更することもできますが、現時点(Version. 24.10.5)ではGUIからの操作では3文字までの変更しかできないようです。)


カスタムチャージを持つ化合物の力場の追加がより簡単に

「SavePrep」は現在の原子座標からジオメトリを取得し、現在の力場から原子タイプと点電荷を取得し、AMBERトポロジーファイルを保存できるコマンドですが、これに新しくPropChargesパラメータが追加されました。
SavePrepコマンドでは、通常は現在の力場から電荷が取得されますが、PropChargesパラメータを「yes」に設定すると、原子プロパティに格納された情報が電荷として保存されます。
チャージを含む形式(例:Mol2)で分子を読み込むと、チャージが原子プロパティとしてインポートされるため、PropChargesパラメータを利用することで、これらのチャージの情報を含むAMBER Prepトポロジーをyasara/fof/usertopo_*.fofとして保存することができます。これらのユーザー提供のトポロジーファイルは、次回の力場更新時に自動的に適用されます。

詳細については、ユーザーマニュアルの以下のページをご覧ください。
Recipes > Run a molecular dynamics simulation > Preparing the force field > define force field parameters manually.

新しいコマンドラインパラメータ「-dir」が追加

YASARA実行コマンドにコマンドラインパラメータ「-dir」が追加され、YASARA内部データ(例:ログ、力場キャッシュ)を書き込むディレクトリを指定できるようになりました。
このパラメータを指定することにより、YASARA本体のディレクトリに書き込み権限がないユーザーでもYASARAを実行できるようになります。

使用例)※環境変数Path使用
>yasara -dir test

例えば、上記のコマンドを実行すると、testフォルダの下に「yasara」フォルダが作成され、その下に内部データが出力されるようになります。
「yasara」フォルダには、下図のフォルダの他に、yasara.acc、yasara.ini、yasara.zmpファイルも一緒に作成されます。

作成されるフォルダ


New external development

複合体を受容体とリガンドに分割し、その後のドッキング実行のために結合部位を定義するためのYASARAマクロおよびシェルスクリプトが、Enade P Istyastonoによって提供されました。詳細は以下のページをご覧ください。


その他の機能追加や改良・修正点

マクロ変更内容
md_analyze.mcr・オプションで平均距離行列(MDM)の計算が追加
参考:ユーザーマニュアル Recipes > Run a molecular dynamics simulation > Analyzing a trajectory > Optionally, the mean distance between atoms…
・オプションでラマチャンドランプロットが追加
参考:マクロ内「Ramachandran」記載部分
md_analyze.mcr
md_runsteered.mcr
style.mcr
ペプチドリガンドが検出可能となった
dock_runcoval.mcrAutoDockGPUに対応
dock_run.mcr
dock_runensenmble.mcr
dock_runcoval.mcr
マクロに「ClusterMembers」パラメータが追加され、各クラスターメンバーの構造を、指定した数、個別のファイルに自動保存できるようになった
md_runmembrane.mcr選択可能な脂質にN-パルミトイルスフィンゴミエリン(HWP)が追加
md_analyzebindenergy.mcr・VINAローカルドッキングの結合エネルギーの出力単位を修正
・VINAローカルドッキングのデフォルト設定が「None」(実行しない)に変更
AutoDockGPU対応マクロAutoDockGPUを使用する場合でもCPU利用時のAutoDockと同じ金属原子タイプをサポート

コマンド変更内容
Groupグループ名の指定文字数が5文字以上から6文字以上に変更(新しい5文字のPDB残基名と区別するため)
SavePDBデフォルトの保存形式がPDBフォーマットver.3に変更
LoadYObTransferオプションが追加
(オプション内容はLoadPDBコマンドのTrasnferオプションと同様)
ColorSurf現在のデフォルトおよびオブジェクトごとの表面色を返すことが可能になった
ShowPlaneSpecularオプションが追加
(鏡面ハイライト(光沢のある表面の明るい反射点)の表示・非表示)

その他

  • プラグインのヘッダー行「PLATFORMS」に「ExternalPython」という単語が含まれている場合、YASARA自身の組み込みPythonは使用せず、外部のPythonを使用します。
  • フェロセン化合物について、水素添加、結合のタイプ設定、およびMDシミュレーションがサポートされました。



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