YASARA:【膜タンパク質MD】膜の構成脂質の変更方法

2024年12月19日木曜日

【YASARA】

t f B! P L

※本記事の使用バージョンYASARA ver. 24.10.5

YASARAでは、付属のマクロファイル(md_runmembrane.mcr)を実行することで、自動で細胞膜のモデリング、膜タンパクの埋め込みが行われるので、簡単に膜タンパクのMDシミュレーションを実行できます。

細胞膜の脂質は、デフォルトではホスファチジルエタノールアミン(PEA)を使ってモデリングされますが、マクロ内でパラメータを指定することで、構成脂質を変更することができます。


構成脂質について

現在(YASARA ver. 24.10.5)デフォルトで利用可能な脂質は次の7種類です。

 

・ホスファチジルエタノールアミン(PEA

・ホスファチジルコリン(PCH、別名POPC

・ホスファチジルセリン(PSE

・ホスファチジルグリセロール(PGL

N-パルミトイルスフィンゴミエリン(HWP

・コレステロール(CLR

・カルジオリピン(CDL

 

脂質の側鎖の脂肪酸は1位がパルミチン酸、2位がオレイン酸で、カルジオリピン(CDL)は4本の「18:2」脂肪酸鎖に設定されています。

マクロのデフォルト設定では、膜はホスファチジルエタノールアミン(PEA)で構成されるようになっています。


マクロファイルの該当パラメータ

膜タンパクMD用の付属マクロファイル(md_runmembrane.mcr)内のはじめの方にパラメータセクションがあり、ここで各種パラメータを編集することができます。

パラメータセクション内の以下の部分を編集することで、細胞膜の脂質の構成を変更することができます。

パラメータセクションの該当箇所

memcomplist()='PEA',100,100,'PCH',0,0,'PSE',0,0,'PGL',0,0,'HWP',0,0,'CLR',0,0,'CDL',0,0

脂質名の後にパーセンテージを入力しますが、それぞれ1つ目が膜の下側の比率、2つ目が膜の上側の比率になっています。

上側と下側、それぞれ合計が100%)になるように編集します。

 

例えば、

膜の上側…PEA70%PCH20%CLR10

膜の下側…PEA80%PSE15%CLR5

のように指定したい場合は以下のように編集します。

 

memcomplist()='PEA',80,70,'PCH',0,20,'PSE',15,0,'PGL',0,0,'HWP',0,0,'CLR',5,10,'CDL',0,0


補足

YASARA付属のマクロファイルはインストールディレクトリ内のmcrフォルダに保存されています。編集したい場合は、ここからマクロファイルをコピー・適当な場所にペーストし、メモ帳などのテキストエディタでパラメータなどを編集後上書き保存します。その後、マクロ実行の際、編集後のマクロファイルを指定して実行します。


変更時の注意点

・カルジオリピン(CDL)の比率は30%を超えないようにしてください。

・ホスファチジルコリン(PCH)は膜の安定性を低下させるので注意してください。

 (最も安定した脂質はPEAです)

・マクロ実行時、タンパク質が膜の構成に対して逆向きに埋め込まれてしまった場合は、パラメータの下側と上側の比率を入れ替えて再度実行してください。(シミュレーションは周期境界で行われるので、膜が上下逆になっても問題ありません)


デフォルト以外の脂質を使用したい場合(上級者向け)

デフォルトで利用可能な7種類の脂質以外の脂質を利用したい場合は、自分で細胞膜のモデリングを行う必要があります。

※シミュレーション中に数分子程度の存在比の新規の脂質を加えたい場合、力場の精度による影響の方が大きいことがあります。そのため、この場合は、複雑な手順でオリジナルの膜テンプレートを作成するより、デフォルトの脂質を使用してしまってもよいかもしれません。

 

テンプレートを利用する方法

YASARAのインストールディレクトリ内のyobフォルダには、いくつか膜のテンプレートファイル(membrane_*.yob)が保存されています。

小さな変更の場合は、この既存の膜テンプレートを複製・調整して利用することもできます。

この場合、編集した膜のテンプレートファイルは「membrane_[任意の文字列].yob」として同フォルダに保存しておきます。

 

次に、md_runmembrane.mcrをコピーし、パラメータセクションの「usermemlist()=」行を編集します。マクロ中に記載してあるように、ここには適用する膜のテンプレート名とXZ方向のサイズ(Å)を指定します。マクロ中の入力例を参考に指定してください。

マクロ該当箇所


XZ方向のサイズは、Simulation > Define simulation cell からオブジェクトに合わせたサイズのシミュレーションセルを作成することで、HUDSIMULATION PARAMETERSCtrl+Iで切り替え表示)からセルサイズとして確認することができます。シミュレーションセル作成時には、形状をCuboidExtend0 Aとして、「around all atoms.」を選択することで、オブジェクトのサイズに合わせたセルを設定することができます。



マクロファイルが編集できたら、普段と同じようにマクロターゲットを指定し、編集したマクロファイルを指定して実行します。


自分で膜のテンプレートを作成する方法

複雑なステップが必要ですが、膜のテンプレートを自分で作成することもできます。詳細についてはこの記事では扱いませんが、試してみたい方は、YASARAユーザーマニュアルの以下のページ、

Recipes-Perform complex tasks > Run a molecular dynamics simulation > Running a membrane simulation the easy way 中の、
箇条書きの「・If you want to simulate a membrane containing less common lipids,~」の項目に具体的な操作方法が記載されていますので、こちらをご参照ください。


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