YASARAでエネルギー最小化(構造緩和)計算を行うマクロ、em_runclean.mcr、em_run.mcrについてご紹介します。
このマクロを利用するには、YASARA DynamicsまたはYASARA Structureが必要です。
使い方はいたって簡単で、YASARA GUIから構造を読み込み,マクロファイルを指定し、実行すればよいです。
例えば、Ephrin type-A receptor 2(PDB:6NK1)の場合、
- File > Load > PDB file from Internetを選択、 PDB IDに6NK1を入力し、OKボタンをクリック
- 続けて、Simulation > Force fieldから力場を指定。何でもよい場合、DynamicsだとYAMBER3力場、StructureだとYASARA力場を使用するのが良いようです。
- Options > Macro & Movie > Play macro を選択、YASARAインストールディレクトリ直下のmcrフォルダにあるem_runclean.mcr、またはem_run.mcrをダブルクリックします。ラディカルや遷移構造などでYASARAに構造修正させたくない場合は後者em_runを、通常は前者em_runcleanを使用するとよいです。
- エネルギー最小化計算が行われ、計算終了後、コンソール上に緩和構造と初期構造で比較したRMSD値が出力されます。File > Saveから緩和構造を保存することができます。
とします。
上の実行結果では、RMSDの出力に続けて、WARNINGメッセージが出力されています。
「WARNING - There are 0 wrong isomers and 4 cis-peptide bonds.」
cis-peptide結合がどこにあるかは、Analyze > Check > AllまたはObjectなどとして、「PrepBonds Absence of cis-peptide bonds」を選択すると確認できます(コマンドの場合、CheckAll Type=PepBonds)。
また、このマクロの中では、Experiment Minimizationが呼び出されています。このマクロでは、クリーニング処理や水素結合ネットワークの最適化などの追加処理が行われているので、Experimentを単独で実行する場合との違いには注意してください。
Experiment Minimizationでは、ユニットセルの設定後、先ず、ショートレンジのエネルギートラップを避けるため、静電相互作用なしで最急降下最小化が行われバンプを除去、続けて、力のカットオフとロングレンジの静電相互作用を考慮したPMEアルゴリズム(任意)を用いた最急降下最小化により配座によるひずみを除去します。その後、シミュレーテッド・アニーリング計算による構造緩和計算が行われます。この収束条件は、マクロ内のパラメータ Convergence により設定・変更することができます。詳しくは、ExperimentコマンドのMinimizationの説明を参照してください。
エネルギー最小化計算は、初期構造近傍のエネルギー極小構造に収束させるもの(local minimization)で、最安定構造に収束させるもの(global minimization)ではないのでこの点にもご注意ください。