「wwPDB検証レポート」とは、タンパク質立体構造の信頼性や正確性に関する検証データをまとめたレポートです。
X線結晶解析による実測データとの整合性がまとめられています。各タンパク質ページの「Structure Summary」タブに表示されているパーセンタイルランクの図または図上の「Full Report」のボタンをクリックすると、別ウィンドウでレポートが表示されます。レポートはpdf形式でダウンロードすることが可能です。
検証レポートは6つの章から成っています。
1.概要(Overall quality at a glance):
対象のタンパク質立体構造の評価データの概要として、パーセンタイルランク(詳細は前記事参照:【バイオケミカルTips】今日のキーワード「パーセンタイルランク(Percentile Ranks)」をご参照ください。)とタンパク質鎖のクオリティ(詳細に関する記事は近日公開予定!)がグラフィカルに示されています。
2.化合物情報(Entry composition):
対象のタンパク質の化合物情報が表にまとめられています。表の内容は以下の通りです。
<表に示されている内容>
Mol:対象のタンパク質立体構造モデルに含まれる分子の数。
Chain:対象のタンパク質立体構造モデルに含まれるタンパク質鎖の分類。
Residues:各タンパク質鎖に含まれる残基の数。
Atoms:各タンパク質鎖に含まれる原子の総数と、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)各原子種の数。
ZeroOcc:占有率がゼロの部分に当てはめられた原子の数。
AltConf:他に候補のある残基の数。
Trace:座標が曖昧な残基の数。(解像度が低い場合等、1~2つの原子からモデル化が行われることがあるそうです。)
3.残基特性プロット(Residue-property plots):
タンパク質鎖のクオリティに関する詳細情報が示されています。(詳細は【バイオケミカルTips】今日のキーワード「残基特性プロット(Residue-property plots)」をご参照ください。)
4.実測データと精密化の統計情報(Data and refinement statistics):
立体構造のモデル化に利用された実測データや構造精密化に利用された統計情報が表にまとめられています。
5. モデルのクオリティ評価(Model quality):
結合長、結合角、鏡像異性体、二次構造といったタンパク質中の共有結合より求めた構造評価と、非共有結合的に重なっている原子数による構造評価、主鎖と側鎖における二面角による構造評価等の結果が示されています。
6.立体構造モデルと実測データの整合性評価(Fit of model and data):
残基またはヌクレオチドごとの整合性を示すRSRZ(Real Space R-value Z-score)と、リガンドごとの整合性を示すRSCC(Real Space Correlation Coefficient)による評価が示されています。
このように、「wwPDB検証レポート(wwPDB Validation)」では、各生体高分子の立体構造データの信頼性を吟味するための情報がまとめられています。立体構造データを利用する際に是非活用してください。
各項目の詳細に関する記事は順次公開していきます。どうぞお楽しみに!